「生きるための図書館」(竹内悊)

図書館は「生きるための」もの

「生きるための図書館」
(竹内悊)岩波新書

「生きるための図書館」という
書名に惹かれ、
喜び勇んで買ってしまいました。
世間一般には図書館の存在は
「あれば便利だけどなくても何とかなる
存在」なのではないでしょうか。
その証拠として
利用が難しい図書館の何と多いこと。
私の地域の市立図書館が
その最たるものです。
平日は仕事があるため
閉館時間に間に合わない。
休日は4台分しかない駐車場が
すべて埋まっている。
バスで往復すれば800円もかかる
(本1冊買える!)距離にある。
このような状態です。
図書館が「生きるため」の
存在であることが書かれてあるなら
ぜひ読まなければなるまい!
そんな思いから購入しました。

「第一章 地域の図書館を訪ねて」
市民が歩いて10分以内の場所に
必ず図書館がある。
そんな地域の図書館の様子が
紹介されています。
図書館が地域に根付くとは
このようなことなのだと
思い知らされます。
羨ましい限りです。

「第二章 子どもたちに本を」
子どもと本の関わりについて
丁寧に述べられていて、
子どもにとって本は
かけがえのないものであることが
よくわかります。
しかも「子どもたちの
感覚や好みを知るためには、
定評のある古典や
標準的コレクションに安住せず、
積極的に新しい分野に飛び込んで、
その分野を図書館の選書の
対象とするかどうかを検討すべき」と、
重要な提言が
数多く盛り込まれています。
著者はこの部分に
最も力を入れています。

「第三章 新しい図書館像を創る」
これからの図書館の在り方と、
専門性を持つ図書館員の
在り方について述べられています。
また、公立図書館の経費削減に触れ、
現在直面している課題について
詳細に説明されています。

「第四章 災害から学んだこと」
東日本大震災で被災した地域の
図書館が、復旧まで歩んだ苦難と、
その中で被災住民に寄り添って
読書の普及活動に取り組んだ様子が
記録されています。
「図書館とは何か」という
根源的な問いの答えにも
なっていると感じます。

「第五章 一人ひとり、みんなのために」
行政サービスはともすれば
最大公約数的なものになりかねません。
そうではなく、図書館サービスは
すべての人間一人ひとりのために
あるべきだということが
力強く述べられています。
特に学校図書館の在り方にも
言及してあるのが
素晴らしいと思いました。

「第六章 人と本とをつなぐ仕事」
再び図書館とは何か、本とは何か、
図書館員の役割とは何かについて
まとめられています。

読み終えて明るい気持ちになりました。
このような本が広く紹介され、
全国の自治体の意識も変わり、
すべての地域で
図書館がしっかり機能する日が
いつか確実に来るのではないかという
予感を持つことができました。
現実はそんなに
簡単ではないのでしょうが。

大人の皆さん、そしてこれから
主体的に学ぼうとしている
高校生、大学生に薦めたい一冊です。
本書を読んで図書館に行こう。

(2019.7.3)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

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